日本ゴルフに“明日”はあるか
2015年01月07日
2015年シーズンで、国内の女子ゴルフツアーは前年と同じ37試合を開催するが、開催を申し込むスポンサーは相変わらず多いと聞く。隆盛も手伝い、試合数は変わらないもの、4大会が増額され、賞金総額は33億3300万円で史上最高額を更新した。対する男子ゴルフ。試合の減少が予想されたのに反し、国内試合数は3増2減。減少した1大会でスポンサーが開催を検討し、日本ゴルフツアー機構(JGTO)は安堵の表情を浮かべた。だが、盛況の女子、苦境に一服感の男子ともに何やら不安要素が見え隠れする。
女子の14年の観客動員数は52万8899人で、前年比で3万1630人増。人気のバロメーターであるテレビ視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は6・1%で同0・1ポイントとわずかだが改善した。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長は12月15日に行われた日程発表の会見で「手応えを厚く感じている。賞金増額は主催者からのオファーでありがたい。選手はさらにモチベーション高くいけると思う」と強調した。
好調な女子を支える要因の1つは、開幕前日に開催されるプロアマ大会の成否にかかると言われる。大会主催者が自らのスポンサーら関係者を招き、選手とともにラウンド。レッスンなどをしてもらい、関係者はご満悦…となる。LPGAはプロアマ大会に出場しなければ本戦への出場を認めていない。それだけ重要視していることが分かる。
ただ、選手の中には「アスリートなのに何で接待で練習時間を割かれなきゃいけないの」と考える選手が以前はいた。しかし、LPGAは新人研修などを通じて徹底した教育を施し、最近では反発する選手は「意外にいない」という。逆に「割り切って仕事と考える若い子が多い」と関係者は話す。
14年は37試合のうち19試合で外国人選手が勝利した。ただ、これもマイナス要因にはなっていないようだ。というのも、国内女子ツアーに参戦している外国人選手は「順応性が高い」との指摘がある。昨季3度目の賞金女王に輝いたアン・ソンジュはテレビでアニメ番組を見るなどして日本語を習得し、流暢にしゃべる。米ツアーで賞金女王になり、昨季から日本ツアーに軸足を移した申ジエも「日本語はペラペラ」とか。男子の外国人選手とは「溶け込み方が違う」(関係者)ことによって、日本のファンも多いそうだ。
ところが、決して順風満帆とは言えない。将来の不安因子は着実に蓄積されているとある関係者はいう。それは選手の「タレント化、アイドル化」だ。「あいさつはちゃんとするし、サービス精神は旺盛で、愛想よくできる確率は高くなっている。若くてかわいくて、ゴルファー層だけでなく、オタク系のファンも獲得している。ただ、それはゴルフの実力とは関係ない部分」と話す。
さらに「ぽっと出の新人が運良く、ある程度の成功を収めると、それを実力と勘違いする人が多い。そういう人はミスショットした際に(クラブを叩き付けるなどの)行為をしてしまい、テレビに映るとイメージダウンにつながる。『芸能人プロ』に徹するなら徹底しろと言いたい。ボロが出ると、繁栄している今だからこそ怖い」と眉をひそめた。
今の若手がゴルフ始めた時期に女子ツアーは「宮里藍効果」などで、すでに隆盛を誇っていた。人気のなかった時代を知らない。男子ツアーが失速した要因の一つに挙げられるのが、ファンに対するサービスの減少。「そういう傾向が怖い」と二の舞を心配する。
その男子。青木功、尾崎将司、中嶋常幸のいわゆる「AON」が全盛期の1990年に44試合を数えた試合数は最近25試合前後で推移。観客動員数は石川遼という「スター」の登場で10年に60万人を数えたが、松山英樹とともに軸足を米ツアーに移したことなどから13年には37万人まで減少。14年は約39万人に回復したが、「天候要因などに左右される誤差の範囲」(ゴルフ関係者)と一蹴されるほどだ。
テレビ視聴率(同)は石川効果で10%近くあったものが、14年は前年より0・2ポイント減の5・4%と半減。費用対効果の観点から「コンテンツとしての魅力が薄れ、スポンサーが付きづらい」状況になりつつある。
13年限りで国内ツアーの冠大会から撤退した大手電器メーカー、パナソニックはインドで開催されるアジアツアーで大会を主催。グローバルな視点で企業戦略を展開し「新興国でブランド・イメージを上げるのには有効」(ゴルフ関係者)と狙いが明確だ。
PGAは14年シーズンから中国でツアーを開催し始めた。成績上位者には米下部ツアーの参戦権を与えられる。しかし、日本の男子ツアーは「世界に門戸が開かれていない。PGAにつながる道筋のビジョンを早く提案しないと」と危機感を抱く。
昨季終盤、米ツアーで活躍するバッバ・ワトソン、アダム・スコット、ジョーダン・スピースら有力選手が参戦した。A・スコットの参戦で日本オープン選手権は前年比2万人増の入場者でにぎわった。「石川、松山以降スターがおらず、客が呼べなくなっている」という現状を改めて浮き彫りにした格好だ。
40代の藤田寛之、片山晋呉らベテランの活躍が目立ち、それに代わる若い力の台頭がない。となれば「JGTOなどが仕掛けて、魅力ある選手をつくれ」という声も出る。「試合に勝って魅せる。優勝争いして面白い選手。プロなんだから魅せる競技をしないと人気が出ない」とベテラン記者も嘆く。
JGTOもアジアツアーなどと連携した試合数の増加、地方都市での国内ツアーの開催などを模索している。果たしてその機運が試合に結びつき、復権に役立つか。自らの努力に懸かる。
女子の14年の観客動員数は52万8899人で、前年比で3万1630人増。人気のバロメーターであるテレビ視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は6・1%で同0・1ポイントとわずかだが改善した。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長は12月15日に行われた日程発表の会見で「手応えを厚く感じている。賞金増額は主催者からのオファーでありがたい。選手はさらにモチベーション高くいけると思う」と強調した。
好調な女子を支える要因の1つは、開幕前日に開催されるプロアマ大会の成否にかかると言われる。大会主催者が自らのスポンサーら関係者を招き、選手とともにラウンド。レッスンなどをしてもらい、関係者はご満悦…となる。LPGAはプロアマ大会に出場しなければ本戦への出場を認めていない。それだけ重要視していることが分かる。
ただ、選手の中には「アスリートなのに何で接待で練習時間を割かれなきゃいけないの」と考える選手が以前はいた。しかし、LPGAは新人研修などを通じて徹底した教育を施し、最近では反発する選手は「意外にいない」という。逆に「割り切って仕事と考える若い子が多い」と関係者は話す。
14年は37試合のうち19試合で外国人選手が勝利した。ただ、これもマイナス要因にはなっていないようだ。というのも、国内女子ツアーに参戦している外国人選手は「順応性が高い」との指摘がある。昨季3度目の賞金女王に輝いたアン・ソンジュはテレビでアニメ番組を見るなどして日本語を習得し、流暢にしゃべる。米ツアーで賞金女王になり、昨季から日本ツアーに軸足を移した申ジエも「日本語はペラペラ」とか。男子の外国人選手とは「溶け込み方が違う」(関係者)ことによって、日本のファンも多いそうだ。
ところが、決して順風満帆とは言えない。将来の不安因子は着実に蓄積されているとある関係者はいう。それは選手の「タレント化、アイドル化」だ。「あいさつはちゃんとするし、サービス精神は旺盛で、愛想よくできる確率は高くなっている。若くてかわいくて、ゴルファー層だけでなく、オタク系のファンも獲得している。ただ、それはゴルフの実力とは関係ない部分」と話す。
さらに「ぽっと出の新人が運良く、ある程度の成功を収めると、それを実力と勘違いする人が多い。そういう人はミスショットした際に(クラブを叩き付けるなどの)行為をしてしまい、テレビに映るとイメージダウンにつながる。『芸能人プロ』に徹するなら徹底しろと言いたい。ボロが出ると、繁栄している今だからこそ怖い」と眉をひそめた。
今の若手がゴルフ始めた時期に女子ツアーは「宮里藍効果」などで、すでに隆盛を誇っていた。人気のなかった時代を知らない。男子ツアーが失速した要因の一つに挙げられるのが、ファンに対するサービスの減少。「そういう傾向が怖い」と二の舞を心配する。
その男子。青木功、尾崎将司、中嶋常幸のいわゆる「AON」が全盛期の1990年に44試合を数えた試合数は最近25試合前後で推移。観客動員数は石川遼という「スター」の登場で10年に60万人を数えたが、松山英樹とともに軸足を米ツアーに移したことなどから13年には37万人まで減少。14年は約39万人に回復したが、「天候要因などに左右される誤差の範囲」(ゴルフ関係者)と一蹴されるほどだ。
テレビ視聴率(同)は石川効果で10%近くあったものが、14年は前年より0・2ポイント減の5・4%と半減。費用対効果の観点から「コンテンツとしての魅力が薄れ、スポンサーが付きづらい」状況になりつつある。
13年限りで国内ツアーの冠大会から撤退した大手電器メーカー、パナソニックはインドで開催されるアジアツアーで大会を主催。グローバルな視点で企業戦略を展開し「新興国でブランド・イメージを上げるのには有効」(ゴルフ関係者)と狙いが明確だ。
PGAは14年シーズンから中国でツアーを開催し始めた。成績上位者には米下部ツアーの参戦権を与えられる。しかし、日本の男子ツアーは「世界に門戸が開かれていない。PGAにつながる道筋のビジョンを早く提案しないと」と危機感を抱く。
昨季終盤、米ツアーで活躍するバッバ・ワトソン、アダム・スコット、ジョーダン・スピースら有力選手が参戦した。A・スコットの参戦で日本オープン選手権は前年比2万人増の入場者でにぎわった。「石川、松山以降スターがおらず、客が呼べなくなっている」という現状を改めて浮き彫りにした格好だ。
40代の藤田寛之、片山晋呉らベテランの活躍が目立ち、それに代わる若い力の台頭がない。となれば「JGTOなどが仕掛けて、魅力ある選手をつくれ」という声も出る。「試合に勝って魅せる。優勝争いして面白い選手。プロなんだから魅せる競技をしないと人気が出ない」とベテラン記者も嘆く。
JGTOもアジアツアーなどと連携した試合数の増加、地方都市での国内ツアーの開催などを模索している。果たしてその機運が試合に結びつき、復権に役立つか。自らの努力に懸かる。
Posted by 本木 at
10:56
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